あなたは今の自分の名前が好きですか。
私は2009年5月、自分の名前を変えた。
戸籍上の話ではない。
笑いヨガ講師としての、生き方ごと変える決断だった。
名前を変えただけで、人は変われるのか。
吃音と戦い続けた57歳が、その答えを正直に話す。
喉は治ってきた。でも吃音だけは、消えなかった

2009年春。喉の痛みは、腹から笑う練習によってほぼ消えていた。
声も戻ってきた。
呼吸も続くようになった。
でも一つだけ、どうしても消えないものがあった。
吃音だ。
人前に立つと、突然やってくる。
「ぼ、ぼくは……み、み、みなさん……」
笑いヨガのセッション中、
30名の利用者さんを前にして、言葉が詰まる。
その0.1秒が、永遠のように感じる。
喉の問題は解決した。
腹から笑えるようになった。
なのに吃音だけは、
緊張という引き金が残っている限り、消えてくれなかった。
どうすれば緊張をなくせるか。
それが、2009年春の私の最大のテーマだった。
mixiで出会った女性の一言「名前を変えてみたら?」

当時、SNSの走りだったmixiに、一人の女性がいた。
四柱推命や九星気学を使った占い師で、
新しく姓名占いも始めようとしていた。
「モニターとしてやってみない?」
そんな提案をもらったとき、私は迷わずOKした。
そのとき彼女が言った言葉が、今でも忘れられない。
「名前を変えてみたら?」 名前を変える。
その発想が、それまでの私には全くなかった。
でも言われた瞬間、何かがピンときた。
吃音の根本原因は、極度の緊張だ。
緊張するのは、「山下直」という
自分のイメージに縛られているからかもしれない。
失敗した記憶、恥をかいた記憶、どもり続けた記憶——
それが全部「山下直」という名前に刻まれている。
新しい名前になれば、新しい自分として立てるかもしれない。
そう思った瞬間、二つ返事で「やります」と答えていた。
スカイプ3時間半。こうして「有川陽大」が生まれた

スカイプをつないで、名前作りが始まった。
私が提案する名前は、全部はねられた。
「陰陽のバランスが悪い」
「画数が合わない」
「この音は詰まりやすい」
3時間半、ああでもないこうでもないと続けた末に、
一つの名前が生まれた。 有川陽大。
「有川」は流れる川のように自然体で。
「陽大」は太陽のように大きく笑う。
その意味を聞いたとき、正直「大丈夫かな」と思った。
スケールが大きすぎる。太陽のように大きく笑うなんて、
今の自分には程遠い。 でも同時に思った。
「そのフリをすればいいんじゃないか」と。
「フリをする」ことが、現実を変える

今、話題になっている本がある。
『タフティ・ザ・プリーステス(女司祭タフティ)』だ。
その核心にあるのは、こういう考え方だ。
「望む現実がすでに実現した自分として、今この瞬間を生きる」
フリをすることで、現実が後からついてくる。
私が「有川陽大」として
生きると決めたのは、まさにこれだった。
太陽のように大きく笑える自分には、まだなっていない。
でも「有川陽大」という名前をまとった瞬間から、
その自分のフリをして立つことができる。
吃音が出ても、「有川陽大」として立っている。
どもっても、「太陽のように笑う人間」として前に進む。
名前が、鎧になった。
新しい名前が、新しい自分への「許可証」になった。
名前を変えてから、何が変わったか

「有川陽大」になってから、少しずつ変わっていった。
緊張は消えたわけじゃない。
吃音も完全にはなくなっていない。
でも何かが違った。
人前に立つとき、「山下直」として立つのではなく、
「有川陽大」として立つ。
その意識の違いが、体の構えを変えた。
声の出し方が変わった。視線の置き方が変わった。
笑いヨガのセッション中、
利用者さんの顔を見る余裕が生まれてきた。
名前を変えることは、逃げじゃない。
過去の自分に縛られた鎖を断ち切って、
新しい自分として生きる選択だ。
あなたにも、
もし今の自分のイメージに縛られているなら——
新しい名前をつける必要はない。
でも「なりたい自分のフリをして今日を生きる」
ことは、今すぐできる。
有川陽大として生きると決めたあの日、
私の人生は静かに、でも確実に動き始めた。


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