失敗したとき、あなたはどうしますか。
言い訳を探しますか。
誰かのせいにしますか。
それとも布団をかぶって、ただ落ち込みますか。
私はずっと、後者でした。
でも、あの電話を受けたとき、不思議と違う自分がいた。
人生初の老人施設、30名の笑顔

笑いヨガ講師になって間もないころ、
初めて老人施設でやらせてもらえることになった。
Nデイサービス。ボランティアとして。
緊張していた。
当然だ。30名以上の利用者さんを前に、
笑いヨガをやるのは初めてだった。
でも1回目、2回目と重ねるうちに、
利用者さんの顔がほぐれていくのがわかった。
声が出る。笑顔になる。手ごたえを感じていた。
「ここで続けていける。」
そう確信していた。3回目に向かおうとした、その当日の朝だった。
当日の朝、電話が鳴った

「申し訳ありません。今後の笑いヨガは中止とさせてください」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
理由を聞いた。
「利用者さんのご家族からクレームが来まして。
おばあちゃんがぐったりして帰ってきたと。
どうしたのと聞いたら、
笑いヨガでたくさん笑いすぎたと言っていたそうで。
利用者さんを疲れさせるわけにはいきませんので」
電話を切った後、しばらく動けなかった。
あんなに笑顔だったのに。
あんなに楽しそうだったのに。
それが、誰かを疲れさせていた。
なぜ失敗したのか、自分に向き合った

ショックのまま終わることもできた。
でも私は、なぜダメだったのかを考え続けた。
答えは、出た。
笑いのエクササイズをやりすぎた。
肩で息をしているおばあちゃんがいた。
あのとき「少し呼吸を入れましょう」と言えばよかった。
間を取ればよかった。
でも私はひたすら続けてしまった。
当時、静岡県で笑いヨガ講師は私一人だった。
誰にも聞けない。養成講座で教わったことをただやるしかなかった。
すべては現場だ。
リアルで、人と人の間でやって初めてわかることがある。
鬱の私はそこにいなかった

以前の私なら、こうなっていたと思う。
布団をかぶって、ブツブツと言い続ける。
「やっぱり自分にはムリだ」
「何をやってもダメだ」
「もう外に出たくない」
でもあのとき、そんな自分はいなかった。
言い訳も出なかった。
誰かのせいにもしなかった。
ただ、失敗と向き合っていた。
なぜだろうと思った。そしてわかった。
「私は笑顔を広げる人間だ」
その使命感が、私の中にできていた。
自分が何者かがわかると、
鬱的なものが入ってくる隙間がなくなる。
気もエネルギーも変わる。
これが「自分軸」というものだと、あのとき初めて実感した。
10日後、Iデイサービスへ。ポイントは一つだけ

Nデイサービスでの失敗から10日後、
偶然の出会いが重なり、
Iデイサービスで笑いヨガをやることになった。
そのとき私が決めたポイントは、たった一つだった。
「笑うよりも、呼吸で休む方を優先する」
エクササイズの合間に、何度も呼吸を入れる。
疲れたら笑わなくていい。
息を整えることの方が大切だ。
理事長が見ている中での第1回目。
緊張はあった。
でも、Nでの失敗が私を落ち着かせてくれた。
なんとか楽しく、終えることができた。
失敗は終わりじゃない。
現場でしか学べないことがある。
そしてその学びが、次の扉を開けてくれる。
57歳の今も、私はそう信じている。


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