ひとりでいるのが好き。
でも、孤独は怖い。
この矛盾した気持ちを抱えながら、ずっと生きてきた。
30年前、27歳の私は英語もゼロ、
知り合いもゼロのまま、ニュージーランドに飛んだ。
そこで味わった「生まれて初めての孤独」が、
この矛盾の答えを教えてくれた。
吃音と鬱を抱えながら生きてきた57歳が、今日は正直に話させてください。
逃げるように、日本を出た

27歳のとき、営業の仕事をしていた。
毎日ノルマ、上司の顔色、数字との戦い。
「このまま真面目にコツコツ働き続けるのが、自分の人生なのか」
そんな疑問が、じわじわと膨らんでいた。 彼女とも別れた。
仕事も嫌だった。自分が何をしたいのか、さっぱりわからなかった。
そんなとき目に入ったのが、ワーキングホリデーの案内だった。
18歳から30歳まで使える制度。
当時27歳の私には、残り時間が少なかった。
「今行かなければ、一生行けない」
その焦りと、逃げ出したい気持ちと、
自分を試したい気持ちが混ざり合って——
気づいたらチケットを買っていた。
正直に言う。
一番大きかった気持ちは、逃げたかった、だ。
それが出発の真実だった。
降り立った瞬間、孤独が現実になった

飛行機を降りた瞬間、頭が真っ白になった。
知り合いはいない。
泊まる場所も決めていない。
英語も話せない。
海外も初めて。
日本にいるときは「なんとかなる」と思っていた。
でも現実は、なんともならなかった。
バックパッカーズホテルに飛び込んだ。
でも英語ができないから、誰とも話せない。
周りは全員外国人。
楽しそうに笑い、話し合っている。
その輪の中に、自分だけ入れない。
周り全員が外国人なのは当たり前のことだ。
でもその「当たり前」が、まったく当たり前に感じられなかった。
後悔した。本当に後悔した。
日本に帰りたかった。
あのとき感じた孤独は、生まれてから一番深い孤独だったと思う。
ひとりが好きだと思っていた自分が、孤独に押しつぶされそうになっていた。
それでも帰らなかった。小さな一歩を踏み出した

帰ろうと思えば、帰れた。
でも帰らなかった。
心の奥のどこかに「ここで逃げたら、一生逃げ続ける」という感覚があった。
オークランドにワーキングホリデー協会があることを知り、
飛び込んだ。
ホームステイ先を紹介してもらい、英語学校も決めた。
少しずつ、生活の輪郭が見えてきた。
街まで歩いていった。
港を眺めた。
図書館で英語を学んだ。
片言の英語で、友達ができた。
毎日が刺激的だった。
知らない土地を一人で歩く自由。
知らない人と話す緊張と喜び。
日本では絶対に感じられなかった感覚が、体中に広がっていった。
でもそれでも、いつもどこかに孤独感があった。
「場違いかな」「自分みたいな人間が来るところじゃなかったかな」
楽しい気持ちと、孤独な気持ちが、いつも同時に存在していた。
ひとりが好きなのに、孤独が怖い。
その矛盾は、ニュージーランドに来ても消えなかった。
バーベキューの帰り道、港で気づいたこと

ある夜、仲良くなった仲間たちとバーベキューをした。
笑って、食べて、片言の英語で話して——
気づいたら夜が深くなっていた。
その帰り道、一人で港を歩いた。
波の音だけが聞こえる。
誰もいない。
そのとき、ふと思った。
「さっきみんなといた時間、楽しかった。今の一人歩きも、好きだ。」
どちらが本当の自分なのか——
そんな問いが、ふと消えた。
どちらも本当の自分だ。
一人が好きな自分も、
みんなといると嬉しい自分も、全部わたしだ。
矛盾しているんじゃない。
両方あって、はじめて自分なんだ。
ひとりでいるのが好きということと、
孤独が怖いということは、別のことだった。
「ひとりの自由」は好き。
でも「つながりのない孤立」は怖い。
それは矛盾じゃなく、人間として当たり前の感覚だったのだ。
その夜、港の水面を見ながら、
私は初めてそれを腑に落として理解した。
過去を否定しなくていい。全部オーケーだった

30年経った今、あのニュージーランドでの日々を思い返すと、
全てがオーケーだったと思える。
逃げるように来たことも。
後悔したことも。孤独で押しつぶされそうになったことも。
それが全部あったから、今の自分がいる。
ひとりでいるのが好きなのに、孤独が怖い——
その矛盾を抱えている人に伝えたい。
矛盾しているんじゃない。
あなたはただ、豊かなんだ。
一人の時間を愛せる繊細さと、
誰かとつながりたい温かさ、その両方を持っている。
それは弱さじゃない。
その両方が、あなたという人間の全てだ。
過去を否定しなくていい。
逃げた日も、後悔した夜も、
孤独で泣きそうになった朝も、全部オーケー。
過去否定論から、過去オールオーケーへ。
57歳になった今、私はそう思っている。
あなたの孤独も、あなたの自由も、あなたの矛盾も、全部本物だ。


コメント
記事拝見させていただきました。
私も現在27歳であり、ワーホリでニュージーランドに来ています。
筆者さんの綴られた言葉を拝見して、納得いたしました。心が軽くなった気がします。
ありがとうございます。
河野さん
こんにちは
コメントありがとうございます
ニュージーランドに滞在中なんですね
一期一会で、目の前の出会いに
感謝を込めて、素晴らしい時間を
満喫してくださいね
応援しています
なおし